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2005/04/18

俺のアイデンティティを返せ!

 昨日は、普段からお世話になっている友人 N 氏のピンチヒッターとして、とある会社のパソコン設定業務にかり出された。こういう業務には珍しく、作業自体に大きな問題もなく、予定時間を一時間繰り上げて帰宅することが出来た。のだが、今日は非常に気持ち悪い思いをしたよ。
 本日、担当者と会った一言目で、「今日は一日、“山田浩”(仮名)という名で通してください。」と言われる。つまり本来やってくるはずの男は山田浩(仮名)さんであり、そのピンチヒッターである俺は、今日一日その当人になりきらねばならない。せめて、俺にこの話を紹介してきた友人の N 氏の名であるなら、まだ気分的にも納得できる。しかし、見ず知らずの人の名を名乗るというのは思っていたより気持ちの悪いものだ。

 パソコンの設定というのは、実はそんなに難しい作業ではない。ただ、一見単純そうな設定でも、作業工程を羅列すると結構な数に上るため、単純にミスを起しやすい。日常生活ではアバウトで済むことも多いが、パソコンの場合は一カ所設定を間違うと、テコでも正常に動かないというのが厄介なところ。そんな理由から、こういった作業には作業工程のチェックシートが毎回不可欠だ。うっかりミスを防ぐため、作業員はチェックシートとにらめっこしながら、粛々と設定を行って行く。で、その最後におきまりの署名を行わなければならない。このパソコンを設定したのは、この俺であると。ところがだ、それが全然別人でしかも見ず知らずの名を記入するとなると、本当に気持ち悪い。一台に付き、ペンによる署名と、キーボードでの入力の二回ほど、俺は山田浩(仮名)という名前を記入し続けた。書く度に

「俺は山田浩(仮名)じゃねぇ!」

という思いがこみ上げる。
 家に帰ってまず行ったことは、紙に自分の名前を書くことだった。普段当たり前のように書いている自分の名前。それを書くことが、こんなにも気分の良いことだったとは!

 陰陽師(原作:夢枕 獏)という作品がある。この中で、全ての名前は“呪”であり、そのものを、それとしてあらしめる源であると同時に、そのものを、それに限定するための“縛り”であるといった下りがある。言霊ともいえる。ちなみにこのブログからリンクさせてもらっている 蘊恥庵庵主 さん(このお方、現役の高校教師で国語の先生なのだ。この人の授業は面白いだろうなぁ。)のブログ 不二草紙 本日のおススメ“京都議定書発効…「集団気分」と言葉”という項にも言霊に関する考察があり、非常に興味深い。勝手に引用させていただく。

 これが言葉の恐ろしさです。集団気分を作るのは、間違いなく言葉の機能の一つです。「いじめ」も「ひきこもり」も言葉が作り上げた世界です。

 人はいかに言葉(文字)の生き物であるかと思い知らされる。言葉は良くも悪くもカテゴライズする性質がある。
 俺の嫁が小学校の先生だということは、ここで触れたかどうか定かでないが、先生なわけです。でもって、時々会話の中で気になるのが、ADHD(注意欠陥・多動性障害)などという言葉。昔なら落ち着きのない子で済んだところを、ADHDと呼ぶ(カテゴライズする)ことで、まるで病人のようにしてしまう。人間とは一人残らず病人であるという正しい認識の元で、そのような会話がなされているのであれば、あまり問題はないと思われる。しかし実際はどうか。幸い、嫁はその危険性も十分に理解している。ただ、教育の現場では、どうしてもそういう観点から、物事捉える必要もあるようで、事は単純でもないが。

 名前で思い出した。俺は東京芸術大学を受験するために、何年か大学入試センター試験というのを受けたことがある。(結局合格は叶わなかったが、今だって受けようと思えば受けられるのだ、挫折した覚えもなけりゃ、あきらめた覚えもない。)毎年、国語の試験は俺にとって楽しみであった。長文読解の問題に出される例文が、誠に素晴らしい。ある年の試験では、問題に感動して解答用紙を涙でぬらし、ある年の問題ではその哲学的な考察に圧倒された。大学の教授というものはこういう素晴らしい文章に囲まれ、研究を続けているものなのかと、心底感心したものだ。
 いつの年だか記憶が定かでないが、その例文に名前に関する考察があった。痛く感動した割りにはしっかり内容を覚えていない。近いうちに図書館へ行って、当時の入試問題を探してみたくなった。もう一度読み返す事が出来たなら、またこの項の続きを書きたい。

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コメント

おはようございます。
私の駄文を引用していただきまして、ホント恐縮です。
さらにトラバを2発送ってしまったようでゴメンナサイ。
一つ消しといてください。
それにしても、LUKEさんのお書きになったこと、
ホントよくわかります。
特に教育の場というのは、まさに「語る」場ですので、
教師は言葉にもっと敏感であるべきでしょう。
規定できないものを規定しているんだという意識が大切です。
それも自分のことは棚に上げて、人のことを…。
つくづく恐ろしい仕事です。はい。

ちなみに私の人生を変えた読書は「入試問題」ばっかりですよ。
入試問題は名著のエッセンスばっかりですからね。
ベスト盤ってところかな。気に入ったら全部読んでみる。
そんな感じです。受験国語って、とってもお得なんですよね。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2005/04/18 10:44

!!(o^0^)o<<<LUKE~♪

何だか Intelligence な、ブログとコメント・・・
また一つ賢くなった気がする、


陰陽師の中では、言霊というものを呪縛として扱っていましたが、
それは、どこにでもあるんだと思いますね、

言葉を扱う種である人間は、
生まれ出でた瞬間から、囚われてしまう・・・死の目前まで、
少しでも、ゆるやかな呪縛であって欲しいけれども、
生きていくうちに、強固なものになってしまう、

抗い難いことだけど、
せめて、自分から呪縛の中に飛び込まないようしなくてはね、


教育に関しては、家庭ありき・・・だと思う・・・
昔は聖職と言われていた、職業の教師ですが、
今はそういう事もなくなってきたようで、
教師といえども人の子・・・その事実は否定できないから、
何もかもを学校に任せキリじゃなくて、
家庭での親の教育が大切だと思う、

教師の一言で、人生が変わってしまうなんて、
そんなのは変だと思う、
確かに先生の一言は影響力があるかもしれないけれども、
子供は学校の中だけで生活している訳じゃ無いのだから、


と・・・小難しい事を考えてしまった・・・


人が人を教育する・・・って、難しいネ~☆
する方もされる方も、発展途上だったりするわけだから、
これが正しいんだ!って、言い切れない・・・
試行錯誤しながら、それぞれが育っていく感じですネ、

夜猫の、無理やり!コメントを入れてしまった感だな・・・
の・・・つぶやきでした~♪^-^


投稿: misty_night_cat | 2005/04/18 13:08

蘊恥庵庵主さんへ
>一つ消しといてください。

いえ、左に表示されているうちは、記念にとっておきます。

>ちなみに私の人生を変えた読書は「入試問題」ばっかりですよ。
>入試問題は名著のエッセンスばっかりですからね。

やっぱりそうだったのかぁ! でも、誰もそんなこと言わないし、試験会場でボロボロ泣いてたら、試験官が何事かとやってくるし。(笑)

>そんな感じです。受験国語って、とってもお得なんですよね。

ですよね。センター試験の国語の勉強は本当に面白かったですよ。

夜猫さんへ
>せめて、自分から呪縛の中に飛び込まないようしなくてはね

そこが難しいところでね。あらゆる物事から解放されてしまっても、足場が無くなるというかな、存在が発散してしまうと言うか、う~ん.....2~3行では言い表せないので、またの機会にしちゃおう。


>昔は聖職と言われていた、職業の教師ですが、
>今はそういう事もなくなってきたようで

私は今でも聖職だと思っています。ただそれに就くのはあくまで人間なわけで、悪い人もいれば良い人もいるでしょうし、良い人だってしょっちゅう間違いを起すでしょう。当然のことだと思います。

>教師の一言で、人生が変わってしまうなんて、
>そんなのは変だと思う、

人生が変わるかどうかは人それぞれと思いますが、教師に影響されることは、悪いことばかりじゃないですね。
教師も生徒も十人十色。その相乗効果がプラス・マイナスのどちらに振れるかは、生徒によって違ってくるし、乱暴に言えばどうでもいい気がするんです、私には。誤解されちゃうかな、こんな書き方すると。
以前このブログでもちょっと書きましたけど、教師は、自分の生き様を生徒に見せてやることが一番重要な仕事で、その他のことはオマケで良いと思います。

>人が人を教育する・・・って、難しいネ~☆

私の好きな言葉に
「教育とは教えないことだ!」
というのがあって、これは、教育を放棄するという意味ではなく、生徒が学びたくなるように手助けしてやると言うことなんですが、これもまたの機会。

>これが正しいんだ!って、言い切れない・・・

そう、正しい事なんてひとつも無いです。

>試行錯誤しながら、それぞれが育っていく感じですネ、

そう、それが正しい教育です。って、矛盾してるでしょ? でも「それでいいのだ!」って、バカボンのパパも言ってるよ。

投稿: LUKE | 2005/04/20 00:11

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