2005/05/04

自家用ジェットコースター その2

 前回から随分と間が開いてしまったが、オートバイの話しの続き。

 大きな羊と書いて美しいという文字になるのだね、と、小学校の時に担任の代わりに臨時で授業を受け持った教頭先生だったかが教えてくれた。ただ大きいだけで美しいこともあるのだな、と、当時の俺は思ったものだ。
 大きなバイクも、ただそれだけで素晴らしい。アクセルを開けるのがあれほど面白い乗り物も珍しいだろう。300kg 前後の車体に、軽自動車の倍の排気量のエンジンが搭載されている。走行中に車を追い越すなど、ちょいとアクセルをひねるだけで済むことだ。信号で停車して、次の信号までに時速 100km 出すことも造作もないから、スピード感覚も麻痺するというか、とりあえずメーターを見る習慣はなくなる。

 画塾の日は、大急ぎで帰らないとバイトに間に合わなかった。だから週に二回ほど、一般道を飛ばしながら帰路に就くことになる。そんなことが続いたある日、気が付かずにパトカーを追い抜いてしまった俺は、毎回引っかかる信号で停車中にスピード違反で捕まってしまった。パトカーがサイレンを鳴らして追いかけてくるならまだしも、こっそり追尾してくるとは、この卑怯者め! さぁ発信だという直前に、横からエンジン・キーを引き抜かれてしまったので、素直にお縄を頂戴するしかない。実は数ヶ月前にも全く同じ場所で、同じように捕まっている。一度捕まった後なのでかなり用心していたつもりなのだが、迂闊であった。

(やば! 前回免停食らったばかりだから、今度は免許取り消しになるかも?!)

メーター読みで 160km/h は出ていたはずだ。まともに計測されていたら間違いなく免許は無くなる。折角苦労して限定解除(注)したのに、なんてことだ。
 パトカーに連れ込まれ、警官に尋問される

「一体何キロ出してたんだ?」
「.......。」(ここはトボけるしかない。)
「39 キロオーバーだ、それ以上は振り切られて計測出来なかったぞ。なんで信号で止ってた? もう逃げられたと思っていたのに。」
(気付かなかったんだっちゅうの。パトカーの存在に気が付いていたら、横道に入って逃げているよ。)

 しかしラッキーだった。40km/h 以上なら、免許取り消し(当時)だが、未満なら累積で 14 点。首の皮一枚で繋がった。しかし、軽微な違反ではないので、ありがたいことに赤キップを頂戴した。つまり、反則行為ではなく、ハッキリとした罰として、その瞬間から俺は前科一犯となってしまったのだった。指紋は手の十本指全部採られた。しかも指の腹だけではなく、脇の方からねし付けるように。

 チクショウー! 悪い事したらすぐに足が付いちまうぜ!

※注)限定解除:免許の表に「自動二輪車は中型に限る」などと、限定された免許の限定項目を解除することをいう。一般的には自動二輪車の大型免許を指すことが多い。

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2005/03/26

自家用ジェットコースター その1

 大型二輪車の免許。今でこそ教習所で取得出来るが、ちょっと前まではまるで嫌がらせのように、運転免許試験場でしか実地試験を受けることが出来なかった。試験は平日の昼間にしか行われず、余程の暇人か、俺の友人のように、無理矢理会社を休むような酔狂しか受験するものはいなかった。その時代、日本車として発売出来る排気量は 750cc までと規制されており、それ以上のものに乗りたければ、外国製のバイクを選ぶか、逆輸入と称する日本製の外国仕様車を購入するしかなかった。免許取得の困難さ、当時の為替レート(1 ドル= 250 円程度)も相まって(平気でバイク一台が 200 万円以上した。)、バイクに興味のあるものにとって、大型車に乗るのはまさに“夢”であった。金があっても免許は取れないし、免許があってもおいそれと買える値段ではなかったのだ。それに加え、憧れる理由は他にもある。バイク好きは間違いなくバイクの機動力(加速力)が好きなのだ。250cc の中型二輪車でさえ、大抵のスポーツカーよりスタートダッシュは速い。しかも夢の逆輸入車となれば、馬力規制もなく、平気で 100 馬力以上、スピードメーターも 200km/h 以上メモリが刻まれていた。(今時だと 160 馬力、メーター 300km/h なんていうのもある。すげぇ。)一体全体、どれだけ速いのか見当も付かない。当時のバイク乗りはそれらを畏敬を込めて、“リッター・モンスター”(リッター= 1 リットル=1000cc の怪物)と呼んだものだ。
 長くなりそうなので、俺が免許を取った経緯は端折る。
 免許を取得してしまった俺は、ご多分に漏れず、モンスター・バイクが欲しくなってしまった。逆輸入車など身分不相応でしかないのだが、当時日本はバブル景気の真っ最中であり、数年前まで 1 ドル= 250 円以上のレートが、急激な円高により、あれよあれよと 1 ドル= 100 円前後になってしまった。
 逆輸入というのは、一旦外国に商品を輸出し、その国の税関手続きを経て日本に戻される仕組みだ。つまり日本で売る価格に、外国までの往復輸送料、外国と日本での関税が上乗せされるため、仮に同じ品物でも普通は割高となる。しかし急激な為替変動は面白い現象を起した。一時的ではあったにせよ、逆輸入車の値段がビックリするくらいに安くなったのだ。バイク雑誌を見たら、あこがれのバイクが 75 万円前後で予約受付となっている。目を疑った。普通に国内向けのバイクを買うより安かったのだ。販売店に行ってみると、納車手続きなど諸費用コミで 100 万円弱だという。迷わず親から借金をして購入に踏み切った。(毎月の返済額 10 万円。それを 12 ヶ月繰り返して、年利 20%で返してやったぜ。)それがこのバイク GSX1100S 刀(KATANA)だ↓
GSX1100S 刀
 実際は限定色で赤い車体だったが、写真をスキャンするのが面倒なので一般的なこっちを載せておく。
 当時の月収は手取りで 17 万円だったから、そこから借金を差し引いた額で生活費全般をまかなわなければならなかった。食費を削ってもガソリン代に窮するほどだったが、不思議とそれなりに充実した一年であった。

---つづく---

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